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コラム

山と海と、今と昔と、ご縁が結んだひとしずく

2021.03.31

山々に降る雪が解け、やがて川となって平野を潤し、日本海へと流れこむ。その自然の風景がコンパクトに収まっている庄内地域。その風景を象徴するような商品が、この3月に誕生しました。

出羽三山の歴史は

海から始まった?

羽黒山は現世、月山は過去、湯殿山は未来、三山をめぐる「生まれ変わりの旅」は江戸時代に人々の間で広まり、多くの修験者や参拝客が出羽三山を訪れました。

開祖の蜂子皇子は、御父・崇峻天皇の亡き後、聖徳太子の進言で宮中を逃れ、丹後国の由良から船で北へ。荒波をこえてたどりついたのが、出羽国の由良の八乙女浦でした。蜂子皇子はその後、八咫烏(やたがらす)に導かれて羽黒山へと入り、三山を開きます。出羽三山と由良の「縁」はこうして開山の縁起として伝えられてきました。今年、湯殿山が開かれた丑年にあたる12年に一度の御縁年という節目の年に、「出羽三山 縁(えにし)」は生まれました。

出羽三山との鯛(タイ)アップ

「縁」ができるまで 「出羽三山 縁」は、由良の浜から生まれた、天然の鯛のだし入り醤油。最近はさまざまな料理に使えるだし醤油が多くありますが、こちらは鶴岡市由良のお母さんたちが昔からこよなく愛してきた「小鯛だし」仕立て。小鯛はチダイの地方名で、郷里の作家・藤沢周平の小説にも「小鯛の塩ふり焼き」が登場するほど風味に優れていながら、骨が硬く身が小ぶりなせいか市場では値がつかない魚として扱われてきました。「小鯛は「分け魚」として隣近所に配って、家々で焼き干しにしていました」。

そう話すのは「ゆらまちっく戦略会議」代表の齋藤勝三さん。同会は由良の人々が参画して地域の魅力発信と地域づくりを進めている組織で、その内部グループの浜のお母さんたちによる「海鮮レディース」は食の分野を担い、魚食普及に努めています。

3月16日、「出羽三山 縁」の新商品発表会が由良コミセンで行われ、ゆらまちっく齋藤会長、海鮮レディース代表の和田光子さん、出羽三山神社禰宜の吉住登志喜さんと権禰宜の中野雄一朗さんが揃いました。

「このおいしいだしを知らないのはもったいない」。和田さんたち海鮮レディース7人のメンバーは、昔から離乳食などにも活用してきた「小鯛だし」に着目し、これまで粉末だしとだし入り味噌を開発しました。「お父さんたちから一生懸命魚をとってきてもらって、私たちは商品づくりに励んで、地域の所得向上につながれば、由良がより元気になるはず」と期待を込めます。

小鯛を1匹ずつ下処理し、焼いて干してと手間を惜しまずつくっただしの風味を存分に生かそうと、マルノー山形(㈱みどりサービス)と共同で試作を重ねた完成品は、刺身などのかけ醤油、水炊きなど鍋物のつけだれ、お湯を加えて簡単すまし汁など「どんなふうに食べてもおいしい」自信作です。

こちらは”庄内浜謹製”海鮮レディースの皆さんが開発した商品。

12年分のご利益

御縁年参りへ

出羽三山神社の吉住禰宜は「混沌とした時代に『御縁』はますます大切なもの」と話します。「八乙女伝説にあるように、由良の人々が温かな心で蜂子皇子を迎えたからこそ、皇子はこの地に上陸したのではないかと思います。この商品は海鮮レディースの皆さんが『地域のために』という温かな心でつくりだした商品。ご神縁がつないでくださったこのお醤油から、庄内の風土や人々の心意気が伝わればと思います」。御縁年の今年、4月からは毎月丑の日限定で特別な御朱印が頒布されるそう。

写真は、絵本作家のつちだよしはるさんの奉納絵馬をお守りにした干支守と、三山特別御朱印と蜂子神社特別御朱印。

由良発、地域漁業の

新しいものづくり

齋藤会長はこの「出羽三山 縁」に3つのコンセプトを掲げて、今回の発売にこぎつけました。

1.魚の新しい可能性づくり

2.浜の女性たちの活躍、働く場所づくり

3.由良と庄内浜を伝えるお土産品づくり

魚離れが進む中で、魚本来の持ち味をいかしながら手軽に味わってもらうために、調理を手助けする「だし」の開発は魚食の新提案。忙しい浜のお母さんたちが実生活の経験から生み出した「手軽でおいしい」小鯛だし商品は、粉末、味噌ともにリピーターを増やしている人気ぶりです。「出羽三山 縁」にも、齋藤会長の背中に書かれた由良の漁村文化の魅力がぎゅっと濃縮されています。

肝心のお味のほどは

いざ、実食!

発表会当日には、海鮮レディースの皆さんが試食用に、お刺身とギバサをのせた豆腐を用意してくださいました。さっそくいただくと、醤油は角のないまろやかな口当たりで、鯛のうま味がいっぱいに広がります。後味も上品で、魚のえぐみやにおいをまったく感じさせません。この自然に体になじむような風味は、素材の鮮度と丁寧な下処理のなせるわざですが、ほかにも企業秘密があるのだとか。つい秘密を探りたくなるその味、ぜひ実際にお試しを!

1本150ml・税込1000円、庄内観光物産館、羽黒山レストハウス(山頂)、湯殿山レストハウスで販売中。