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コラム

最上川から庄内浜へと行き来する 庄内人がこよなく愛す“川ガニ”とは。

2021.12.03

庄内浜テロワールの“テロワール”は、自然や人、歴史など庄内浜を取り巻くすべてを表します。海へと流れる川も、その水の源の山も、庄内浜へとつながっているもの。今回は、海から川をさかのぼり、川の上流にあたる里山で「食の恵み」を味わいました。

 

田沢川ダム

 

秋から冬に旬を迎える

もずくならぬモクズガニ

 

里山ではちょうど紅葉もピークを迎えた秋晴れの10月末日。酒田市山元地区のやまもと農村交流センターでは「里山の食の恵み 親子体験教室」(主催:「食の都庄内」ブランド戦略会議)が行われ、小学校低学年親子21名が参加しました。

 

この日の内容は「ガニ汁」と新米の「おにぎらず」作り。カニ汁ならぬ“ガニ”汁は、知る人ぞ知る庄内の妙味、川で獲れるモクズガニを使ったみそ汁のことです。

モクズガニはよく「モズク」ガニと言って間違われますが、毛深いハサミが「藻屑」に見えることから「藻屑蟹」と書くのでお見知りおきを。

 

なるほど納得のうまさ!

川で育つ上海蟹の仲間

 

さて、庄内地域では“川ガニ”と呼ばれているモクズガニ、じつは中国の高級食材「上海蟹」と同属異種で、茹でたり蒸したり焼いてもおいしくいただけますが、庄内では昔からみそ汁にして味わってきました。

 

調理体験の前に、まずはモクズガニの採捕の見学からスタート。

採捕場所の小林川は戸沢村の大森山から流れる田沢川の支流で、やがて最上川に合流します。モクズガニはきれいな水にすむといわれ、昔から最上川で採捕が行われてきました。

モクズガニ獲りの先生、山元地区の奥山信一さん。モクズガニは普段は川に生息して、秋から冬にかけて海の方へと下り、淡水と海水がまじわる河口部で産卵、繁殖。夏に川を上ってきます。

 

奥山さんが前日に獲った小さなカニは、大きく育つようにもう一度川に放流します。

みんな最初は恐る恐るカニをさわっていましたが、上手に放しました。

放流が終わったら、奥山さんが前日の夜に川に仕掛けておいた「ガニ洞(どう)」といわれるカゴを引き揚げます。エサはなんとサンマ!「今年はサンマが高値だからイワシも使ってます(笑)」。

カゴを使ったカニ漁の解禁は9月1日~12月で、遊漁権が必要です。

カゴはカニが一度入ると出られない仕組み。

 

この日はシーズン終盤のため不漁でした。残念!

「以前は12月半ばまで獲れていましたが、最近は漁期も短くなりました。カニは脱皮するごとに

大きくなって、このへんで一番大きいのは1匹500グラムほどもあるんですよ」。

不漁でもガニ汁の材料はご心配なく。奥山さんは自宅でカニを飼っていて、その数なんと1000匹超!

「家ではかぼちゃを食べさせていますが、栗かぼちゃのようなおいしいものでないと食べません」。タライの中のオレンジ色が、カニがきれいに食べたかぼちゃの皮。

 

うま味抜群!

川ガニ汁を作ってみよう

 

センターに戻ってカニ釣り体験。スルメをエサに、ハサミではさんでもらおうと竿を垂らしますが

避ける!逃げる!カニたち…。

 

 

カニも泡を吹いて疲れた様子。みんなのお腹もすいてきたので、そろそろ調理に取りかかります。

【川ガニ汁の作り方】

1.きれいな水でカニを洗い、足と甲羅をはずす(この日の会場では「かわいそうー」の声)。

2.「ふんどし」といわれる部位と肺を取り除く。

3.1のカニのハサミを取り除き、水を加えてミキサーにかける。

〈注意〉モーターが弱いとミキサーが壊れる場合があります。ブレンダーはNG。

4.ミキサーの作動音が静かになったら止めて濾す。

5.味噌と少量の水をあわせて、4と混ぜる。

6.5を鍋に入れて火にかける。火力は弱火から中火程度。強火だと焦げるので注意。

7.煮ている間にネギと豆腐を適当な大きさに切る。

8.6のみそ汁の中でふわふわとした固まりができたらネギと豆腐を入れる。

 

 

この日は奥山さんが工程5までを作ってくださっていたので、火加減に気をつけて煮ていきます。

「はじめからみそを入れると、カニの濾し液が固まっておぼろ豆腐のようになります」。

 

 

包丁使いも上手!

写真右のお母さんは、山元地区の女性グループ「わいわい工房」の阿部敬子さん。

地元の小林温泉でも料理を提供しています。

焦がさないように時々かき混ぜます。

 

どの班も川ガニ汁ができたところで、次は「おにぎらず」を作ります。

おにぎらずなので、にぎりません。海苔の上にごはんをのせて、具をサンドするだけ。

本日のお昼ごはん、川ガニ汁とおにぎらずのできあがり!

 

川ガニ汁を初めて食べた子どもたちの評判も上々、大人にはしみじみとする味わいです。

奥山さんが、茹でたモクズガニ(雌ガニと雄ガニ)をおみやげに用意してくださっていました。

「このあたりは、水がきれいでカニが純情に育つから赤くなんなぁよ(笑)」と奥山さん。

 

最上川上流の“純情な”モクズガニを味わってみたい方は、やまもと農村交流センターへお電話で問い合わせてみてくださいね(モクズガニの販売は12月中旬まで/1kg 2000円)。電話:0234-43-1371