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コラム

海の中の森「藻場」は、いのちを育む場所

2021.10.13

多くの魚たちが生息し、行き交う庄内の海。

その環境を未来につなぐ「藻場」づくりが進められています。

 

おいしいだけじゃない!

海藻や海草たちの役割

海の中でゆらゆらと海草が揺れる、そこは「藻場」といわれる海の森です。アマモやコンブ、ワカメやホンダワラ、アラメなど、浅瀬にさまざまな海草や海藻が群落をつくって生息しています。

 

藻場は「ブルーカーボン」ともいわれるように二酸化炭素を吸収・除去しているほか、「水質の浄化」「生物多様性の維持」「海岸線の保全(波浪の抑制と底質の安定)」「環境学習」「保養(シュノーケリングやダイビング)」のほか、魚や貝が産卵して子育てをする場所として、また、鳥たちのエサ場として、命を育む重要な役割を担っています。

 

しかし藻場は、昭和50年代に全国的にその多くが消滅しました。原因は埋め立てや磯焼け、化学物質の流入など人為的な理由がほとんど。海が本来持っている“豊かさ”を人の手で取り戻そうと「藻場再生」の取り組みが今、世界中で行われています。

 

庄内浜でも北部の沿岸を中心に10年ほど前から異業種が集まって活動が進められています。そこにダイバー(潜水士)として参画しているのが、酒田市のダイビングスクール「セカンドリーフ」代表の佐藤一道さんです。

 

「地元の漁業者が話す昔の海の豊かさを取り戻せたら」と話す佐藤さん。

 

人が藻場をつくり

藻場は海をつくる

佐藤さんは「藻場再生研究クラブ」を立ち上げてメンバーを募り、藻場の手入れや岩盤清掃、海ごみの回収などを行ってきました。平成27年度から続いている国土交通省東北地方整備局酒田港湾事務所の「大浜生物多様性創出実験」では、民間3社(林建設工業、日建工学、セカンドリーフ)と藻場再生研究クラブメンバー(レジャーダイバー)の活動をきっかけに、平成29年には漁業者を中心とした「酒田港藻場づくりの会」が立ち上がり、保全活動を続けています。

 

「山形県の海岸線のおよそ半分は砂浜で覆われていて、藻場となる磯根が定着する基質が少ない海です。とりわけ酒田はほとんどが砂地で、港湾や護岸施設が貴重な藻場として、生物多様性に貢献しています」。

佐藤さんたちは、母藻(成熟した海藻)を付着させた人工的な藻場を海の中につくり、幼藻が生長できるよう食害生物(ウニや小型巻貝)を採捕して、モニタリング調査を実施。年度ごとに藻場を評価し課題に取り組むうち、活動以前にはなかった藻場も現れ群落を形成し、2020年には藻場にハタハタの卵塊がたくさん付いているのを確認しました。

「長い間、漁業者をはじめ多様なメンバーによる活動の成果です。生物多様性の創出も港湾機能の一つとして、環境保全活動が定着すれば、港湾の藻場機能は多大な貢献をすると思います。そのような理解がもっと広められるよう活動を続けていくつもりです」。

 

成熟して種を持っている母藻を海中に設置して、藻場の再生を促します。

 

↑再生した藻場に産み付けられたハタハタの卵

 

しかしせっかく増えた藻場も、猛暑や豪雨などの影響で部分的に減ってしまうケースも。また、海ごみなどの問題も依然として抱えています。「庄内浜の『今』を見れば、資源も景観もピンチといえるでしょう。でも昔ほどの輝きではないにしても“まだ間に合う”と光を放っているようにも見えます。保全活動も増えていますし、海の風景や海洋レジャー、海ゴミ活動などがSNSで情報が拡散されるようになりました。海を大切にしたいと思う気持ちを育むことが、海ごみの削減や利用マナーなど豊かな海づくりに結び付くと思います」。

 

たくさんの魚がすむ海へ

自分たちの海を見つめて

海藻がフサフサと生えて、たくさんの魚たちが育ち泳ぐ海があること。そして、海岸関係者と利用者間の平和な雰囲気が保たれた環境の中で、昔の海の豊かさを取り戻すこと――。その日を信じてレジャーダイビングや藻場保全活動を続けていきたい、と佐藤さん。「藻場保全の活動でも、人間が手を加えたぐらいではその周辺水域に及ぼす影響はささやかなものだと漁業者も言います。それでも実感しているのは、手をかけた分だけ自然は応えてくれるということ。毎日海に向き合っている漁業者や研究者でさえも、藻場保全活動を通してあらためて学ぶこともあったようです。自分たちの海を見つめて知りえたこと、昔はどんな海だったのか、今がいいのか悪いのかを次代に伝えていくことが大事だと思っています」。

「酒田港藻場づくりの会」の漁業者メンバー