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コラム

加茂水産高校発 庄内浜の食べるラー油

2021.11.30

「未利用魚」や「低利用魚」といわれる魚種に光を当てるべく!加茂水産高校では水産物加工品の商品開発を進めています。すでに発売中の「缶詰」に続く次なる新商品は?! “庄内浜プライベートブランド”の誕生に期待が高まります。

 

庄内の農水産物を

高校生はどう料理する?!

 

11月初め、鶴岡市の「ふじしま市場 たわらや」で、加茂水産高校と庄内農業高校による「課題研究 試食会」が行われました。

両校では課題研究の授業で商品開発に取り組み、開発中の商品について一般の皆さんの声を採り入れようと企画されたものです。

庄内農業高校(以下庄農)からは、野菜が苦手な人でも食べられるお菓子、名産だだちゃ豆を使ったお菓子やスープ、加茂水産高校(以下加茂水産)からは、低利用資源を使ったソーセージ、食べるラー油、ラーメンといった課題研究で作っているものを試食として振る舞い、来場者にアンケート調査を行いました。

 

(左から)ソウダガツオの食べるラー油、庄農で栽培されたごはん(新米!)、ホッケバジルソーセージ、鮭マヨソーセージ。

ソーセージを割ってみると……。

鮭マヨソーセージは、採卵後のメスの鮭の身を利用。採卵後で脂が少なくなった身にマヨネーズの脂とコクを加えています。子どもからお年寄りまで食べられるようにケーシングはやわらかめ。

ホッケバジルソーセージは、大量に水揚げされて価格が下がったホッケを有効活用。バジルは庄農産。こちらは庄農の生徒がアイデアを出し加茂水産の生徒が形にしたものです。

こちらは2校合作、庄農と加茂の「あっさりコラボラーメン」。庄農が麺を、加茂がスープを担当。ラーメン店を食べ歩くなどして、麺とスープの相性をさまざま試作したというその味は本格派!

 

米どころ&魚食文化の

庄内産「食べるラー油」開発

 

この日のアンケートで「めっちゃうまかったです」「辛さもちょうどよく、生臭さがなくてとてもおいしかった」など、商品化を希望した具体的な意見が多かったのが「食べるラー油」でした。

 

そこで後日、加茂水産高校を訪ねて今回の商品開発についてお話を伺いました。

 

庄内浜で獲れる魚の特徴は「少量多品種」といわれていますが、その“少量”の中にも市場にあまり出回らない、いわゆる価値がつかずに利用されていない魚も多くあります。

加茂水産高校の海洋資源科では、3年次からの食品系の課題研究として「加工・販売していない水産物を使った加工品づくり」に取り組んできました。

 

「庄内地域は農産物の加工品に比べて、水産物の加工品はあまり目立たないところがあります。私たちは、既存品に負けない加工品の製造・販売を目指して、加茂水産高校から水産物の加工品を発信したいと思っています」と当科担当の泉山史先生。

これまで商品化した「缶詰」は、学校祭や地域のイベントなどで販売。

缶詰のラベルは生徒たちが授業で考えたもの。化粧箱のパッケージは学生たちが考案し、プロのデザイナーが形にしました。

加茂水産高校の食品製造実習室には、食品乾燥機や缶詰の巻締機械、レトルト殺菌機などの設備がそろっています。

現在、3年生13人が4班に分かれて「食べるラー油」「ソーセージ」「ラーメン」「缶詰」の開発に取り組んでいます。

 

4班はいずれも庄内浜で獲れる未利用魚や学校の漁業実習船「鳥海丸」で水揚げされた魚を活用していますが、その魚種の一つが「ソウダガツオ」です。

 

ソウダガツオは名前の通り「ソウダ節」の原料で、もともとは暖かい海にすむ魚ですが、最近は庄内浜でも獲れるようになりました。味は良くても鮮魚としての価値が低いため、加茂水産高校では油漬けの缶詰に加工していました。

 

「学校で加工できる(許可を取っている)ものが缶詰と瓶詰めなので、瓶の加工品で、ごはんのおかずになるようなものを考えました。魚の風味も生かしつつ、苦手な人も食べられるようなものを目指しています」と班員の渡邊佳穂さん。

 

魚の新しい味を引き出した

商品化まであと少し!

 

食べるラー油の調味料や材料、作り方を調べて、ソウダガツオ以外にもマグロの血合いやサゴシ、イナダなどさまざまな魚で試作を行ったそう。「最初はソウダガツオだけで作ってみましたが、水産高校らしくもう少し水産物を加えることにしました。辛さの感じ方は人それぞれなので、幅広い年齢層の方が食べられる、ちょうどいい辛さを見つけたいなと思います」と班員の阿部柊汰さん。

 

 

先生方への試食とアンケートを何度も行い「もう少し食感があった方がいい」という意見をふまえて、ソウダガツオをメインに、鳥海丸で獲ったベニズワイガニのむき身と庄内浜産のベニエビを乾燥させたもの、さらにカシューナッツを加えて食感を出し、フライドガーリック、フライドオニオンで味を調えていきました。

ベニエビことホッコクアカエビ。このままでも美味。

 

そうして迎えた今回の一般向けの試食会では、初めて校外の人たちに試食を提供。アンケート結果は軒並み好評で、「おいしいと言ってもらえてうれしかった」と班員の皆さんは口を揃えます。

アンケートから見えた課題をさらに研究して、来年4月の卒業までに販売にこぎつけるのが目標とのこと。「学生たちはアイデアをたくさん持っていますが、商品化となると学校でできることは限られてしまうので、今後は地域の企業とのタイアップなどもできたらいいですね。学生たちのアイデアで、水産業など幅広く地域社会に貢献していけたらと思っています」と泉山先生。

「食べるラー油」の班員は、(左から)渡邊佳穂さん、矢萩来夢さん、阿部晴太さん、阿部柊汰さん。海洋資源科の食品系を選択したのは「おいしい料理をつくりたい」「魚をさばけるようになりたい」などの理由から。「料理は一生付き合っていくものなので」と、将来の食の分野を担うべく日々学習と研究に励んでいます。