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コラム

「庄内浜に伝わる浜文化について」

2022.03.10

“由良で生まれ 由良で育ち”業として従事した “庄内浜の魚文化”

私なりに庄内浜を表現します。

 

庄内浜で水揚げされる魚は年間約130種類と言われています

その中で冬の魚が終わりに近づき、春にはまだ早く、「旬」と呼ぶ魚達は無いに等しい感がある2月期、心当たりの魚をご紹介します。

 

『ヤリイカ・才長(さいなが)』

・この時期、自分が漁協に入職頃「才長」と呼ばれる「イカ」が水揚げされていました。

標準和名「ヤリイカ」の事で、全体的な姿形が槍の穂に似ている事から、漁師の間でそのように呼ばれたのが始まりと言われています。一方、身の部分を鞘(さや)に見立て「サヤナガ」と呼ばれる地方名も存在しており、庄内の浜言葉訛りで「サイナガ・才長」と呼ばれていたようです。

 

厳寒の時期、1人乗りの着火船(※注)でメザメ(メスのサメ)の切身を餌に時化の合間を狙って、大型の「ヤリイカ」釣りに出港します。このイカは「才長」と名札に記名され競りに掛けられておりました。底曳網で獲れる「ヤリイカ・メイカ」とは違い、一本釣り漁である事から、荷揚げされる直近まで魚艙(ぎょそう)生簀(いけす)で生かされ、透明な魚体で泳ぐ「活イカ」はまさに高級「ヤリイカ」でありました。近年、資源の減少から、浜に行っても帆を立てた一本釣りヤリイカ漁は見なくなりましたが、昨年辺りから以前ほど大型の魚体ではありませんが復調の兆しが見えてきたと聞いています。

是非、復活して欲しい「魚種・漁法」です。

なお、「寒だら汁」に「才長の刺身」の組み合わせはこの時期の代表料理と思います。

 

(※注)「着火船」とは、一人乗り用の船で、5t未満の小型漁船の一種。エンジンを電気で着火することから「着火船」と呼ばれ、はえ縄漁や一本釣り漁などを行う。

 

『真 鯛』

・「真鯛」は通年庄内浜では水揚げされますが、この時期獲れる「真鯛」は脂が乗り、どの鯛を捌いても包丁に魚の脂が付くと 昔ながらの「魚屋」さんは言います。

「桜鯛」と言う言葉も良く耳にしますが、卵を持ち沿岸に寄って来て産卵準備に入る鯛で、桜が咲く頃の鯛を「桜鯛」と言うのでしょうが、旨さの「旬」ではなく魚がたくさん獲れる「旬」であると考えます。

最高の「真鯛」を食べるなら冬の終わりのこの時期ですよと言うのが庄内浜の「真鯛」です。

 

『平 目』

・「平目」も庄内浜では「底曳網・刺網・定置網」等で通年漁獲されますが、「真鯛」同様、今の時期が一番脂が乗って旨いと言います。この説から言うと「『寒平目』と言われる言葉は庄内地方には無いな」と言う自分の考えが間違っていたのかなと考えさせられました。

 

■ 庄内浜はこの時期時化が多く漁に出られない日が続きます。そのため、「タイやヒラメ」は2月頃に一年の内で一番脂が乗っている事を知らない人は多いと思います。

 

■ 庄内地方には「青森・秋田・三陸」のすべての「真鱈」が庄内に集まって来るのではないかと言うほど、県外産の「真鱈」が集まってきます。庄内浜の「底曳船」も寒鱈漁一色になり、漁場の違いから他の魚は多く水揚げされません。この事も影響して「タイ・ヒラメ」の水揚げも少なくなることも、「タイやヒラメが2月においしいことが、あまり知られていない」ことの要因の一つだと思います。

 

最後に、昔から由良に伝わる、いろいろな魚の「独特の呼び名」をご紹介しましょう。

 由良に伝わる独特の呼び名の魚

『才 長』  =ヤリイカ・・・・今ではほとんど知られてない「ヤリイカ」の呼び名

・『梅雨ゴンタ』=口細カレイ・・・梅雨時期に獲れる「口細ガレイ」の事。

「ゴンタ」由良地区で呼ばれる独特の言葉で、由良で泥地の事を昔の人達はごだ場」と呼んでいた。かれい類は漁場が砂を含む泥地に多く生息する、由良を代表する最高のカレイが梅雨時の口細カレイであったことから「ゴンタ」と言われるようになった。

 

・『芳(よし)ガニ』=ズワイガニ・・・由良では良いズワイガニの事を「芳ガニ」と呼ぶ。

漁師は船上で「水っぽいカニ」と「身が入っている良いカニ」を選別していた、その時の「良いカニ」と言っていたのが「芳ガニ」に変わった。

 

・『イオ』= 白鮭(しろざけ) ・・・由良で揚がる白鮭の事を「イオ」と呼んでいた。

以前 由良の定置網漁に従事していた人達が浜で口にしていた言葉。

新潟県村上では鮭が「イヨボヤ」と呼ばれており、 由良でも村上の定置網に従事する人達がおり、そこから訛り「イオ」となったと考えられます。

 

※2月頃の旨い魚と由良地区で使われている独特の魚の呼び方について紹介しました。

 

庄内総合支庁産業経済部水産振興課

佐 藤  剛