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コラム

祖父が好きだった小ダイの塩振り焼き

2023.11.07

私の祖父は大正時代、代々婿取りの家で初めて生まれた長男。先祖は鶴ヶ岡城の門前で「塩物屋」を営んでいたと伝え聞いている。主に塩引き鮭(しょんびぎ)などを売っていたようだ。後を継いだものは手塚林蔵と名乗り「ヤマリン」の屋号で水産関係の商売をしてきたという。

祖父の親の幼名が熊蔵、そしてその親は寅蔵で仲が悪い象徴だということになり、林に治めるで「林治」と命名された。戦時中は満洲へ渡ったが、私には戦争の話はほとんどしなかった。しかし毎日のように「ああだもんだ」「こうだもんだ」と私をしつけるためか、一挙手一投足にいちいち口を出してきた。食にもうるさく、「これかねまね」「あれかねまね」と季節(祖父はしぇづと言っていた)のものを食べなければ気が済まなかったようだ。春にはサクラマス、夏には小ダイ(チダイ)、秋には口細・ハタハタ、冬には寒ダラと旬の魚で季節を感じていたのであろう。特に「小ダイの塩振り焼き」は大好物で身を食べた後、頭や骨を器に入れ熱湯を注ぎ醤油を数滴たらす。これを今でいう「シメ」みたいな感じで味わうのだ。

小型魚はカスゴ(春日子)と呼び一応出世魚と言える。身は柔らかいが鮮度が良ければ刺身にもなる。おすすめは「酒蒸し」だ。お気に入りの皿に柑橘系を添えるだけでいい。秋になり肌寒くなると、それがタイ子にとって代わる。タイ子は言わずと知れた魚の王様「真ダイ」の小型魚だ。庄内ではおよそ150グラムから250グラムくらいを指す。秋の終わりから春の始まりまでが旬で脂ものってくる。脂ののった白身魚の塩振り焼きは何を食べても美味しい。ノドグロがそれの代表になるだろう。しかし30年ほど前まではそんなに多くは獲れなかった。またさほど知られてもいなかった。もともと暖かい海を好む魚だが温暖化により庄内でも獲れるようになったのだろう。
私と祖父の共通点といえば、高校は酒田に汽車で通学したことぐらいだろうか。父の好きな魚は焼き物ならサドアマダイ(シオイタチウオ)の味噌漬け、刺身は平目、私は焼き物はサクラマスの素焼きが最上で刺身は真ダイ。親子でも好みはあるようだ。
庄内には季節(しぇづ)にどうしても食べで魚がある。そして私はそれをどうしても食べで人でいつづける。これからそういう人が多くなるよう多面的に活動していけたらと思っている。

庄内浜文化伝道師協会 会長 手塚太一