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コラム

庄内の食材と郷土料理

2024.02.08

 日本海の幸に恵まれ、美味しい農作物の採れる「食の都庄内」と称される地域庄内。
 他の地域から訪れる人達からも何を食べても美味しい所と、よく言われます。社交辞令が半分としても、すごい事だと思います。このことがすごいことだとわかったのは、若い頃に東京、大阪、京都と庄内以外で料理の勉強をして庄内に帰ってからです。東京で大学の学生時代、下宿のおばさんに、鱈の子漬けや鮭の味噌粕漬けをお土産に持っていくとすごく喜んで、酒田の料理って美味しいねと、何度も言われたものでした。いつも食べていて、特別な料理でもなかったのでその時は、お土産喜んでもらってよかった、くらいに思っていました。それが、料理の世界に入って、料理というものは、色々な状況、意味、場所、形、そして季節によって全く違うのだということを知りました。一般家庭で毎日食べている料理はその地域、好み、予算によって変わります。酒田で賄いとして食べているものが、東京ではとんでもないごちそうで、予算が倍くらいになるもの。東京でも食べられるけれど賄いではちょっと大変なごちそうになるもの。逆に東京ではそんなに値段が高くなく賄いとしてよく食べるものに魚の干物があります。アジ、イワシがよく下宿の朝食にでました。今は東京の人達も昔ほど干物を食べなくなりました。庄内地方では昔から新鮮で安く生で食べられるのに、何も干物を食べる事はないというような風潮があって、あまり食卓にはあがりませんでした。昔から新鮮で美味しいものをなんとなく食べていたのです。干物も美味しいのですが、生の新鮮な魚介類には好みもありますがかないません。それが分かったのが料理の世界に入ってからでした。
 魚介類だけではありません。米、野菜、果実、まわりを見ると本当に美味しいものがこの庄内では採れています。米などは庄内を離れて生活してすぐに酒田で食べていたご飯はおいしかったな、と気がつきました。今から50年位前の事です。


 今は世界のニュースがリアルタイムで伝わる時代です。流通も当時から考えられないほど発達し、たいがいの地域に今日発送すれば明日には相手の手元に届く時代です。庄内で採れる食材は日本中に2~3日で行きわたるのです。たまに郷土料理をその地域で産する食材と混同する方がいらっしゃいますが、その地域に根付いた調理方法で昔から作られていた食材を使って、作られてきた料理のことなのです。


 その郷土料理が各家庭の核家族化が進み、継承が難しくなりつつあります。それを補うように近年は私達飲食店や大手の食品製造企業等で色々な種類、形で郷土料理を提供するようになってきました。各家庭のおばあちゃんが作る、というスタイル、これからは難しくなるでしょう。時代の流れでしょうがない事だと思います。ただ企業が作るのは利益を出しやすい商品になります。当然、外れる料理もでてきます。それを拾い上げていくのは私たち庄内で郷土料理に携わっている者の責任ではないでしょうか。
 海の環境が年々激しく変化しています。温暖化なのか海流の変化なのか地球そのもの変化なのか?今までのように海の幸がいつでもたくさん獲れる時代は終わりつつあるように思います。言われ続けて久しいのですが、これからは獲る漁業から育てる漁業に早晩転換せざるを得ない時期がきているのではないでしょうか。庄内から海の恵みを取ってしまったら庄内でなくなります。

庄内浜文化伝道師
旬味井筒 石寺憲和