かまぼこができるまで
かまぼこやちくわ、さつま揚げなど、いつの時代も日本の食卓にある魚の練りもの。その原材料にはさまざまな魚が使われ、それぞれの風味をいかした多種多様な商品が作られています。そこで今回は「滝川蒲鉾」の看板でおなじみ、有限会社竜泉・滝川さんを訪ねて、「かまぼこ」作りを見学させていただきました。
まずはかまぼこの製造の基本の流れから。
①原料魚の入荷 ②擂り(すり) ③成形 ④蒸し ⑤冷却の順序で作られます。
①地元の水産加工組合から、船上で頭や内臓などを取り除いた鮮魚が届きます。
写真は鯛。大量に見えますが、かまぼこの原料として使われる魚肉はこの約3分の1。
かまぼこはたくさんの魚が凝縮した栄養たっぷりのごちそうなんですね。
②大半のかまぼこの原料となるのが「スケソウダラ」。滝川蒲鉾さんは、市販のかまぼこの多くに入っている防腐剤などの食品添加物を使わないかまぼこ作りを行ってきました。
擂りはかまぼこ作りで最も大切な作業で、できあがりの風味や見た目に大きく影響します。季節やその日の温湿度などに左右されますが、そこは職人の腕の見せどころ!代々受け継がれた技術と感覚で安定した品質を保っています。
擂りで使用する臼と機械
③お祝い事などでよく目にする鯛のかまぼこは、昔、鯛が高級で手に入らなかった時代に、その代用として作られていたとか。たい焼き屋さんにあるような?型にすり身を流し込み、まんべんなくのばします。
④両面にすき間なくすり身をのばしたら蒸し器へ。蒸す時間は魚種やかまぼこの形によって異なりますが、今回は1時間程度、約90度に設定して蒸します。
⑤蒸しあがったらすぐに水に冷やしてできあがり。
次は、丹頂鶴(たんちょうづる)のかまぼこ作り。
擂りまでは同じ工程ですが、ここからは細工かまぼこ専用の型にすり身を入れて作ります。ハレの日にぴったりのひょうたん、なすび、きんちゃくなどの型も。滝川蒲鉾さんでは、お祝い用のかまぼこ作りにこの道具が昔から使われてきました。
鶴を型取ったかまぼこが完成したら、それを土台にデコレーション。すり身を絞り袋に入れて、ケーキに絵柄を描くように羽や目などを飾ります。
こうした細工かまぼこには、滝川蒲鉾さんのように細工を施した立体的な「絞り出し」や、
金太郎飴のようにどこを切っても同じ絵柄が表れる「切り出し」などの製法があり、いずれも職人さんの技術がものをいいます。食べて見て楽しめる、奥深きかまぼこの世界。
折(約5000円)の一例
庄内浜で水揚げされた鯛100%使用のつみれも作っていただきました。同社代表取締役、滝川義朗さんいわく「魚の風味が強く、口に入れた時の弾力が他と全然違う」のだそう。
こちらは手とつけ包丁で成形します。
左手の親指と人差し指で丸を作り、そこからすり身を絞り出します。むにゅ、むにゅとすり身たちが出てくるのに見とれていると、あっという間に一列が出来上がり。すり身がなくなるまで絞ったら、蒸して冷やして完成です。
庄内浜の地魚を使用したすり身は、鶴岡市内の学校給食として子どもたちに提供されています。
かまぼこといえば、おせち料理の紅白かまぼこや、お祝いの時の細工かまぼこなどハレの日のごちそうだったり、はたまたお弁当やラーメンなどに添えられていたりと、”名脇役”として欠かせない存在でした。しかし滝川さんは、主菜になれるものからホットスナック感覚のものまで、さまざまなアイデアかまぼこ作りに励んでいます。
店頭には、ごはんが進むサクサク食感の「お魚コロッケ」や、おでんにも合う「チーズかまぼこ」、春巻きの皮で包んだバターポテトのかまぼこなど、よりどりみどりのかまぼこが並びます。
「せっかくおいしい魚がたくさん獲れる庄内浜があるので、もっともっと魅力を発信したいんです」と滝川さん。
ひとくちで口いっぱいに広がる海の味。今夜のおかずに、晩酌のお供に、お子さんの3時のおやつに、庄内浜のかまぼこお一ついかがですか。