あの有名洋菓子にも採用! “もったいない”から生まれた「酒田の塩」
「塩は食肴(しょくこう)の将」といわれるほど、食事に欠かせない「塩」。日本では古代から海水を 煮詰めた「海塩」づくりが行われてきました。各地にさまざまな「塩」がある中で、“ひと味違う”庄 内浜の塩づくりを訪ねました。
リデュース(Reduce)な
さかたの塩の始まり
庄内海岸とクロマツ林が並走する国道7 号を北へ。海沿いの集落・酒田市宮海に「㈱さかたの塩」の 工房があります。高橋建築㈱現会長の高橋充治さんが建築廃材を有効活用しようと塩づくりを始め たのは14 年前。以前から船を所有するほどの海好きで、慣れ親しんだ海に着想を得て「廃材を燃料 に、海水で塩をつくろう!」と、3 基の釜を設けて製塩業に乗り出しました。
さかたの塩が生まれる
山と海のまじわるところ
酒田の塩は、東北随一の独立峰・鳥海山の伏流水がまじわる海水を原料にしています。 宮海からさらに北上した遊佐町吹浦地区は海岸から山裾までがごく近く、山に降った雨や雪解け水 が年月をかけて森や岩のミネラルを含んで伏流水となり、海中に湧き出しています。伏流水(真水) が流れ込んだ海水はプランクトンが多く、この辺りでとれる岩ガキはそれを餌にぷっくりと身を肥 やし、夏の名産として知られています。
海水に伏流水が混ざれば、海水の塩分濃度は下がります。沖縄などの海水の塩分濃度は3%ほどとい われますが、さかたの塩の原料の取水地は3%未満。1500 リットルの海水から採れる塩は60 キロほ どです。製法は平釜を使った「二度焼き」、いわゆる「焼き塩」です。「一度焼いただけではピリッと 角が立った塩味ですが、二度焼くことで丸みが出るんです」と教えてくれたのは、さかたの塩代表取 締役の大川義雄さん。今回は塩づくりの一部を見せていただきました。
平釜でろ過した海水を煮詰めて「かん水」をつくっています。
アクを取り除きながら煮詰めていくと、上澄みにうっすらと塩の結晶ができてきました。
燃料の建築廃材をくべる大川社長。ちなみにこの日の気温35℃。炎暑です。
温泉のような風情ですが暑い!普段、気温の高い日は熱中症の危険があるので作業はしていません。
ぐつぐつと気泡の勢いで結晶が砕け、細かい塩が沸き上がります。火加減は用途によって変えている そう。
すくった塩から「にがり」を適度に取り除いて、乾燥を繰り返します。
乾燥も釜の煙突の熱を活用。「酒田の塩」のできあがりです。
逆ピラミッド型のトレミー結晶は、ゆっくり煮詰めてできたもの。「フランス料理のコンソメのよう に雑味を出さず煮詰めて上澄みの結晶だけを使います。すると澄んだダシのような味になるんです」。
捨てられてきたものに
光を当てる塩づくり
「残渣や副産物などを資源にして光を当てたいと思っています」と大川さんが話すように、酒田の塩 の商品群は酒粕、ワインの澱(おり)、しょうゆの搾りかすなどが“生まれ変わった塩”ぞろい。廃棄し ていたものを活用できることから、現在は全国のワイナリーやしょうゆ蔵などのオリジナル塩も多 く手掛けています。
(写真左から)ワイン塩、酒粕塩、プレーン
岐阜県の山川醸造の「ふりかける醤油」にも酒田の塩が使われています。こちらはフランス料理の巨 匠アラン・デュカス氏のロンドンの三ツ星レストランで使われているそうです。 酒田の地酒「楯野川」の酒粕塩は、日本酒のつまみにもおすすめ。
米沢市の特産品・土産品商品開発・卸販売㈱マウントスマイルの企画商品で、天童市の七味メーカー 大正館食品製造「酒田の塩 浅漬けの素」は、農林水産省「フード・アクション・ニッポン・アワー ド2020」を受賞。浅漬けの素に続く“野菜がうまくなるシリーズ”第2 弾「酒田の塩使用 塩だれ」は 7 月に発売されたばかり。
さらに!東北エリアの不二家「ミルキークリームカップケーキ」の塩ミルキー味にも酒田の塩が採用。 山形、宮城、秋田、岩手、青森の不二家洋菓子店で8 月末まで販売中です。
このほかにもさまざまなコラボ商品やプロジェクトが進行中とのこと。山のミネラルと海のミネラ ルをぐっと煮詰め、手塩をかけた「酒田の塩」。調理塩としてはもちろんテーブルソルトにもおすす めです。
【公式】さかたの塩 |オンラインショップ (https://sakatanoshio.com/)