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コラム

庄内浜に伝わる浜文化 ~冬編~

2022.01.14

これから「寒鱈」がおいしい季節になるが、その名の言われからすると正確には寒の間(小寒~立春まで)ということになる。近年は地球温暖化の影響もあり季節が少し後ろにずれている感じで、2月いっぱい美味しく食べられると言っても良い様だ。標準和名としてはご存じの通り「マダラ」だが、この時期そして特にこの地方で「寒鱈」と言っている。似たようなものでは富山における「寒ブリ」が有名なたとえになると思う。

このマダラは庄内浜では底引き網漁が休みになる7~8月以外の一年中獲れる。そこでこの親しみある魚のおすすめの食べ方を季節ごとに紹介したい。まずは春3~4月は産卵後のやせ細った姿から「棒ダラ」と呼ばれている。干したスケソウダラを戻して煮た「棒ダラ」にもこの呼び名が使われるが、この時期は一番味が落ちるのでムニエルやフライなどの油を使った料理がおすすめだ。5~6月になると「桜ダラ」と言って少し体が太り少し美味しくなる。この時期の食べ方としておすすめは昆布締めや漬け魚だ。味に力が少ない分旨味を足すと効果的のようだ。

底引き網の休漁期間が明け9月以降は寒に入るまではシンプルに「タラ」と呼んでいる。白子やたらこが未成熟な分肝臓のうまさが充実しているので、それを使った汁料理は抜群にうまい。身を塩漬けしていわゆる「塩鱈」にしてもいい。鍋も良し煮物に良しである。冬はいよいよ「寒鱈」と呼ばれ、まさにこの時期は身や内蔵すべてにおいて充実している。

面白いのは寒鱈のどんがら汁は庄内地方だけでも地域によって酒粕を入れるものもある。これは特に料理人がつくるものに多いが一般的には味噌のみで仕上げる。また岩のり・長ネギは必須だが、大根・豆腐を入れるものもある。各部位の呼び名については白子をキク・ダダミ・タツ、肝臓をあぶらわたなど庄内において地域ごと様々である。

「どんがら」とは「胴もあらも」の意からと伝わっている。(諸説あり)

我が家はその昔、加茂港に漁船を有して漁業もやって関係からか、最もシンプルなスタイル。つまり味噌仕立ての白子長ネギなし岩のりありである。

私の調べによると総合的には海に近い方がシンプルなつくりで、山間部では野菜などが入り具沢山となり、市街地では酒粕などの調味料が入ったシンプルなものになるようだ。

自論になるが大きくこの3種に分類していると思う。

「寒鱈のどんがら汁」ルーツは漁師が番屋で暖を取るために作ったのが始まり(諸説あり)と言われている。30年くらいまでは、鶴岡では寒の間メスのほうが値段が高かったようだ。

今はオスの値段はメスの約倍くらいする。

寒鱈には不思議な力があるという、ひとを集める力があるという、鱈汁会がそれにあたるのだろう。

 

 

【株式会社手塚商店 代表取締役社長 手塚太一(庄内浜文化伝道師マイスター)】